服装ルールが改定され、カラフルなネイルを楽しむ「ドン・キホーテ」の従業員

 1年前、従業員の声をきっかけに創業約50年で初めて従業員の髪色を自由にするなど、身だしなみのルール緩和に踏み切った老舗スーパーがある。生鮮品などの食品を扱ううえに、客層は中高年が中心とあって、「お客さまに不快感を与えるのではないか」という点を懸念していたが、実際には思わぬプラス効果や気づきが生まれたという。

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 東海地方を中心にスーパーの「ピアゴ」や「アピタ」を運営するユニー。戦前に生まれた履物屋と呉服屋の流れをくむ1971年設立の老舗だが、昨年11月に従業員の髪色など、身だしなみを自由化した。ルールを緩和したのは設立以降、初めてという大きな決断だった。

 従来、髪の色は市販のヘアカラー剤の色番を見本として示した上で、「自然な栗色まで」としていたが、完全に自由に。黒に限定していたヘアアクセサリーは、「大きすぎず、落ちないものならOK」に。ネイルの色はベージュかピンクのみだったが、凹凸のある飾りがなければ色や模様は自由とした。

 落ちたり、はがれたりして、異物混入につながりかねないもの以外は、従業員の主体性に委ねた形だ。

老舗で客層は中高年でも大丈夫?

 ユニーは2019年に「ドン・キホーテ」を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の傘下に入った。

 ドンキにも身だしなみのルールが存在したが、PPIHは22年の3月にルール緩和に踏み切った。

 PPIHの「ダイバーシティ・マネジメント委員会」で自由化にかかわった増渕美里さんは、

「PPIHにはもともと、多様性を認めようという企業理念があります。一定のルールの下で、その人がその人らしく働くことができる環境を作りたいと考えました」

 と語る。その増渕さんも、髪の一部を金色に染めている。

 ただ、客層が若く、店内のアミューズメント感が楽しいドン・キホーテと「多様性」は親和性があるように映るが、かたやユニーは生鮮品などの食品を扱うスーパーを運営していて、しかも老舗で客層は中高年が中心だ。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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