「お客様の理解が得られるか、不快に思われないか、といった懸念がありました」と増渕さん。グループの中でユニーだけは、身だしなみのルール緩和が見送りとなった。
だが、その半年後のこと。
ユニーでは会社幹部と現場の従業員が意見を交わす機会を年に数回、設けているが、その場で一人の従業員が声を上げた。
「なぜユニーだけ身だしなみが自由にならないのですか」
多様性を重んじるPPIHの企業風土からすれば、この従業員の発言は当然の疑問だ。
「社内であらためて検討したところ、反対意見は出ず、意外にすんなりとユニーのルール緩和が決まりました。老舗であるユニーの上層部も、柔軟性をもって向き合ってくれたと思います」
と増渕さんは振り返る。
とはいえ、「ご意見をいただくことは覚悟していました」とPPIH広報でユニーを担当する魚住千尋さんは本音を明かす。「自由」だけが独り歩きしないよう、工夫も必要だ。
「ルールを緩和する前に『派手な髪色に染める場合は、店で一番元気なあいさつと好印象な接客を心がける』という趣旨の通知を、全店舗に出しました」(魚住さん)と、引き締めを図ったという。
ルール緩和でから1週間で金髪に
岐阜県南部にある各務原市。「ピアゴ各務原店」に勤務する入社3年目の神谷文博さん(25)は、ルール緩和からわずか1週間で黒髪を金色に染めた。
「僕は学生時代も黒髪でしたので、特にルールに窮屈さは感じていませんでしたが、従業員はみんな髪が真っ黒なので個性がないなとは思っていたんです。髪色はその人の個性で自由ですし、もちろん接客が悪くてはだめですが、髪色くらいで差別されるのは違うんじゃないかと。グループでユニーだけが見送りになったときは、なぜいけないのかと疑問に感じました」
一度は髪を染めてみたかったという神谷さん。ちょっと不安もあったというが、イメチェンしてみた結果は……。
「髪の色、いいねえ」
よく来店する年配のお客さんたちから声をかけられるようになり、新たなコミュニケーションが生まれた。どこに何の商品があるかは、あの金髪の店員に聞けばいいと、お客さんが自分を認識してくれるようにもなったという。