■森喜朗氏が「師匠」
馳氏は1984年のロサンゼルスオリンピックにレスリングの日本代表として出場。その後、プロレスラーを経て、1995年に参院議員に当選して政界入り。2000年に衆議院にくら替えすると、衆院議員を7期務め、文部科学相などを歴任。昨年3月の石川県知事選で当選を果たし、知事に就任した。
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は馳氏についてこう語る。
「馳さんは政治家になると、森喜朗元首相、安倍元首相の流れをくむ『清和会』に入りました。森さんはスポーツ界の人脈が豊富で、スポーツ関連政策を数多く手がけてきた。それをスポーツ事業へとつなげる、いわゆるスポーツ族議員です。馳さんにとっては、森さんが師匠。だから、彼もまたスポーツ族議員なんです」
馳氏が記者会見で話したところによると、講演会は日体大と連携協定を結んでいる地方自治体の意見交換会。講師として招かれ、公務として講演したという。
なぜこのような発言が飛び出したのか。
「馳さんとしては、慕っていた安倍さんをしのぶような思い出話が出てしまったのだと思います。確かに、馳さんの発言は軽率ではありますが、黙っていたらそのまま永遠に闇に葬られていた事実であり、“けがの功名”とも言えるわけです。馳氏の失言のおかげで、東京オリンピックがカネと利権の巣窟だったということが、再び浮き彫りになったのです」(鈴木氏)
その上で、馳氏の発言内容の問題点をこう指摘する。
「IOC委員100人以上に賄賂を渡していて、そのお金が内閣官房の機密費から出ていたということが最大の問題です。機密費が汚職に使われた可能性が浮上したわけです。この問題は、しっかりと国会で検証されるべきでしょう。そのためには、国会に馳氏を参考人として呼ぶなり、政府を追及して答弁を引き出すなりして、きちんとケジメをつける必要があります」