宝塚歌劇団の生徒手帳には「上級生、下級生とは記者会見で遺族側弁護士が示した手帳。縦の絆、同期生とは横の絆」と書かれている

 女性だけの空間というのも、特殊な状況を生み出す要因になっているといい、

「嫉妬、ねたみ、嫌がらせというのはすさまじいです」

 と話す。

 人気が出始めると、衣装やアクセサリーを隠されたり、メイクの道具が本番直前なのになかったり、といったことが起きるという。

「そんなことは私もよくありました」(Aさん)

 特に先輩に目を付けられたときは、

「人気があるからって、テングになってさ」

「いいね、先輩を踏み台にして、人気にあぐらかいてさ」

 といった言葉を投げつけられたこともあるという。

 今回の報告書を読んだというAさんに率直な感想を聞くと、

「劇団は、証拠がないからいじめはなかった、で通せると思っているようですね」

 と言い、こう続けた。

「いくら弁護士さんがいても、証拠になるような内容を話せる“場所”ではないのです。そういう宝塚の組織性というのがまったく理解できていないので、責任回避のような内容になっているんじゃないのかと感じました。報告書では、劇団員たちに30分、1時間ほど事情を聴いたとありました。そんな時間ではとうてい語れません。弁護士さんに短期間で理解してくれというのも無理なことなんでしょうけど」

「宝塚だけは時計の針が動かない」

 今回、問題の一つとなっているヘアアイロンの件についても、

「髪を整えるのにヘアアイロンは必須です。すごく熱くて、200度くらいにはなります。押し付けられたりしたら飛び上がるほど熱いです。報告書では、ヘアアイロンでのやけどは日常的によくあること、といった趣旨の記述がありましたけど、あんな熱いもの、自らのミスでやけどするなんてそうありませんよ」

 と指摘した上で、

「彼女も本当は声を上げたかったんでしょうけど、何か言えば何倍にもなってまたいじめにあう……」

 と話した。

 社会は変化していっても、「宝塚だけは時計の針が動かない」(Aさん)のだという。

「よく、先輩が乗る阪急電車がホームから出ていくまでおじぎをする、という話がされましたよね。都市伝説だろって思っている人がいるようですが、私もやっていました。あんな程度で叱られないなら、いじめられないならいくらでもやります」

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