宝塚大劇場前にある「ベルサイユのばら」像

「昔からまったく変わらない宝塚の体質が、今の時代に合わないことはみんなわかっているけど、上の立場になるほど、体質が変わらないでほしいと思っているからです。そのほうが威張れて楽ができて、厳しいなかでもストレスが発散できるので、内部の情報が外に出るのをすごく気にするのです。スキャンダルは一切だめ。“真っ白”でなければいけない。そういう劇団です」

 厳しい上下関係、パワハラとも取れる言動や指導などの様子が外に出てしまい、それが改善されてしまうことをよしとしない、良いと思わない人たちもいる、ということのようだ。

「私も中にいるときはそれが当たり前だと思っていたけど、それでも終わりの2、3年は、このままでは宝塚はダメになる、変えなきゃ、と思いました。だけど、とてもそんなことができる組織じゃなくて、そんな声を上げようものなら一生恨まれ、嫌がらせが続く。そういう陰湿なところがあるので、何も言わずに辞めました」

宝塚にいたことがステータスに

 宝塚歌劇団に入るステップは、宝塚音楽学校に合格できるかにかかっている。宝塚音楽学校の合格発表の風景は、関西では定番のようにテレビのニュースで流される。超難関であることは有名だ。

 それだけに、一度、宝塚に足を踏み入れると、

「頑張って入学して、宝塚にいたということが一つのステータスになります。それが一生ついてまわり、OGになってからも結束が固い。だからこれまで宝塚のマイナスの部分が表ざたにはあまりならなかった。一方で、外部に情報を漏らしたと疑いがかけられ、途中でいじめや嫌がらせに屈して辞めるなどした子は、OGとしても相手にされない」(Aさん)

 Aさんのまわりには、「変えなきゃ、声を上げなきゃ」と思っていた先輩や後輩もいたが、結局は何もできなかったという。

「自殺した彼女には、本当に申し訳ない思いでいっぱいです」

「宝塚では、先輩は絶対的存在で、意見することはご法度です。表向きは『清く正しく美しく』。そのような世界観を保つには仕方がない、という話を幹部から聞いたことがあります」

宝塚駅前に立つデュエットダンスの像
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