しかし、いかんせん当時20代後半だった私は、今の10倍以上鼻っ柱も強く、今の100倍以上見た目も麗しく、我ながら「私が歌ったところで説得力ないわぁ。オホホ」と思いながら歌っていた記憶があります。そもそも、大橋純子の曲においそれと手を出すなど、若さ故の浅はかさと無鉄砲さがなければできなかったでしょう。それぐらい彼女の歌声、リズム感、表現力は軽快で重厚で伸びやかでした。
話は紅白歌合戦に戻りますが、今年のテーマは「ボーダレス」だそうです。旧ジャニーズが出場しないこと以上に、この身も蓋もないテーマを掲げてしまうNHKの方が心配になります。
国・人種・宗教・性別の垣根をなくすという理想や願望にケチを付けるつもりはありません。それでもあえて「男対女」の構図で盛り上げるからこその「紅白歌合戦」ではなかったのか。
大事なのは「区別しない(ボーダレス)」ことではなく、「共存する(ミクスチャー)」ことです。70年代・80年代の紅白は、それを堂々と体現していました。「ウチは民放と違って受信料を頂戴します!」という特別意識とプライドもありました。
聴こえの良い外来語で平和を標榜したいのであれば、せめてもう少し気骨のあるワードセンスを、日本の公共放送としては持っていて頂きたいものです。