「SMILEーUP.」副社長の井ノ原快彦氏

亡くなった後に「個別に補償交渉がしたい」

 前述のように、男性は性被害の訴えを旧ジャニーズ事務所に放置され続けたことを気に病んでいた。SMILE-UP.側からは、男性が亡くなった10月13日から一週間程がたったころ、「遺族の方に対して、当事者の会の弁護士を通じて『個別に補償交渉をしたい』という申し出があった」(代理人)という。

 前出の男性の知人も、葬儀後のSMILE-UP.側の対応に疑問を抱いている。

「男性が亡くなったことを知った後も、SMILE-UP.側は自殺した事実が明るみに出るのを恐れて、ひた隠しにしてきました。だから、亡くなってから1カ月も表に出なかったのです」

 当事者のプライバシー保護もあり、遺族以外が事実をどこまで公表するかは難しい面はある。だが、自殺の原因の一端が性被害告発に対する誹謗中傷であるならば、これ以上被害を拡大させないためにも、SMILE-UP.社がある程度の情報開示をして、誹謗中傷を止めさせる対策を徹底する必要はあっただろう。

 SMILE-UP.社に遺族の訴えに対する事実確認やこれまで公表しなかった理由などを問い合わせると、文書で以下のように回答した。

「ご逝去の報に接し、ご遺族皆様のご心痛いかばかりかとお察し致します。謹んでお悔やみ申し上げますとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。スマイルアップは、5月時点では被害者窓口機能が立ち上がっておらず、その後、再発防止特別チームの提言により、被害に遭われた方へのご連絡は、第三者である救済委員会に全て委ねることとなりました。救済委員会からは2回、心のケア窓口からは2回、ご本人に折り返しご連絡していると伺っております。弊社としては、繰り返し被害者への誹謗中傷をしないようにお願いするなど、弊社側でできることは取り組んでまいりました。しかしこのようなことになり何も返す言葉はございません。今後は、被害にあわれた方やご家族等に対する誹謗中傷は法的に対応できないか検討しております。また亡くなられた方のご遺族からのご意向により、個人の情報や詳細についてのコメントは、差し控えさせて頂いております」

 なお、SMILE-UP.側が男性の死を「隠していたか」という問い合わせには「そのような事実はございません」と回答した。

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「涙がずーっと止まりません」