睡眠や覚醒の質への影響も

 実際に、イタリアのボローニャ大学のLorenso氏らが、サマータイムへの移行と、サマータイムからの移行時における、睡眠や覚醒のサイクルの質に及ぼす影響について検討した調査があります。その結果(※2)によると、サマータイムからの移行時と比較して、サマータイムへの移行後において、睡眠や覚醒サイクルの質のより強い悪化が示されたことから、ヒトの概日システムは、サマータイムへの移行(春の遷移)よりもサマータイムからの移行(秋の変化)に適応しやすいことを裏付けている、と筆者らは主張しているのです。

 最後に、サマータイムへの移行とサマータイムの終了を初めて経験したことで、日々の生活の中で太陽を意識し、また、太陽の存在に感謝するようになった気がします。長い時は、20時過ぎごろまで明るかった生活から、17時前には日没し、暗くなってしまうというダイナミックな日照時間の変化は、日本では経験することがなかったことの一つです。

 サマータイムへの移行までの冬の間は、日中の時間を大切にして過ごしたいと思います。

【参照URL】

※1https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32844740/

※2https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23998287/

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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