しかし、残念ながら低緯度オーロラの光は弱いため、肉眼では見えないことが多い。今回もそうだった。
中島さんは今回、同天文台の敷地内にオーロラの観測機器を設置している名古屋大・宇宙地球環境研究所のデータと突き合わせて、撮影したピンク色の光がオーロラであることを確認したという。
しかし、2003年には肉眼でもかすかにわかるほどのオーロラが観測されており、1989年にははっきりとオーロラだとわかるほど、明るい赤い光が目撃されている。
低緯度オーロラの存在は古くから知られており、日本書紀には「赤気」という名で記されている。620年の記録で、日本最古の天文記録とされている。
出現のチャンスが増える?
太陽の活動は11年周期で変動を繰り返し、活発な現在は大規模なフレアの回数も増えている状況だ。
大規模なフレアによって磁気嵐が発生すると、GPSの誤差、パソコンなど電子機器の誤作動、無線通信の障害などが起き、社会インフラに悪影響を及ぼしうる。そのため、太陽の活動はリアルタイムで観測され、「宇宙天気予報」も行われている。
中島さんはほぼ毎日、太陽表面の状況や太陽風の強さ、地磁気の荒れ具合を日本の情報通信研究機構(NICT)や米国海洋大気庁(NOAA)のウェブサイトでチェックし、オーロラ撮影をねらう判断材料にしているという。
30年以上前からオーロラの観測と研究を続けてきた名大の塩川和夫教授によると、太陽活動が活発な来年から再来年にかけて、北海道でオーロラが見える可能性が高まるという。
「活発な時期はあと数年続くと思います。低緯度オーロラはめったに起こらない現象ですが、それでもぼくらは今年すでに3回観測しているわけですから、これからも見られるチャンスはあると思います」
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)