斉藤由貴(写真:つのだよしお/アフロ)

芸能人としては「ギャップ」がなくなった

 とはいえ、今回の不倫報道が盛り上がらないのは、ネタとして今ひとつというのも関係しているだろう。

 尾崎は当時すでにカリスマ的存在で、覚せい剤での逮捕歴もあり、不倫発覚と破局の翌年、26歳で急死して、伝説の人となった。川崎もまた、華のあるイケメンで、かつ、不倫に怒ったカイヤ夫人(当時)の鬼嫁ぶりが話題を集めることに。開業医は一般人だが、前回の騒動時には「斉藤のものとおぼしきパンティーを頭にかぶった写真」が飛び出すなどして、面白がられた。

 こうした相手側のインパクトやクセの強さは、彼女への当たりを弱めることにもつながったが、今回は相手側にも彼女にもそれほどの関心は集まってないようだ。

 その背景には、世間の移り気というのもある。

 16年の「ゲス不倫」から7年。さすがに不倫も飽きられてきたのか、最近は統一教会騒動やジャニーズ騒動など、洗脳やハラスメントといったものが関心を集めるようになってきた。メディアが優先して取り上げるのも、そういう騒動だ。

 この原稿の前半で触れた「日刊ゲンダイ」の記事は「斉藤はアラ還を目前にして"無敵状態"になりつつある」と締めくくられているが「無敵」であるとともに「無関心」という要素も加わってきていることは否めない。それは世間が、彼女について学んだ結果、不倫をしても驚かなくなったということでもあり、ギャップがまったくなくなるのも芸能人としてはあまりよくないことだ。

 なお「週刊文春」の続報では、斉藤夫妻がモルモン教の規律に反することでもある離婚に踏み切る可能性も出てきているという。が、そういう私生活の変化より、女優としてこれからどうなっていくかを注目したいところだ。

 ここはいっそ、板につきすぎた感もある悪女っぽい役ではなく、思い切り聖女の方向に振り切った役を演じて、培ってきた女優力を示すときかもしれない。

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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