「今年でいえば村上が不調だったこともあり、最も怖い4番打者は岡本和だった。でも、最も嫌な4番打者は間違いなく大山です。どんな打者でも好不調の波がありますが、大山は走者を還す打撃技術の引き出しが多い。犠飛であったり、併殺崩れの内野ゴロだったり、安打でなくても得点が入る打撃をする。ウチもここぞという時に痛打を浴びた印象が強い。ボール球に手を出さないし、アウトに仕留めるのが困難な打者です。打撃3部門の数字がフォーカスされますが、4番の価値はそれだけではない。もっと評価されていい選手だと思いますよ」
8犠飛はリーグトップ。得点圏打率.294もまずまずだ。大山の成長を表す数字がある。以前は早いカウントから打つ打席が目立ったが、今季はリーグ最多の99四球をマーク。前年の59四球から大幅に増え、自身初となる最高出塁率(.403)のタイトルを獲得した。ボール球に手を出さず、四球で出塁してチャンスを広げる。チームが勝つための打撃に徹する姿に、スポーツ紙記者はある強打者と重ね合わせる。
「黄金時代の西武で4番を張った清原和博と似ているんですよ。清原は打撃3部門でタイトルを獲得できず、『無冠の帝王』とも呼ばれたが、あれほど厄介な4番はいなかった。1点が欲しい場面ではフルスイングせず軽打で走者を還す。選球眼が良いから四球も多かった。大山は本塁打、打点の数をもっと増やせる選手ですが、打撃タイトルにこだわる必要はない。弱いチームで個人タイトルを狙って常に大振りの4番より、強いチームの4番でチームバッティングができる強打者のほうが価値がありますよ」