現在60歳、大宮アルディージャやコンサドーレ札幌で指揮を執った三浦俊也も、独自の道を歩んでいると言える。駒澤大学卒業後に社会人リーグでプレーした後、プロ選手としての経験がないまま、指導者を目指してドイツ留学。帰国後の1996年にS級ライセンスを取得すると、1997年にベガルタ仙台の前進であるブランメル仙台でコーチ、監督を務め、翌1998年に水戸ホーリーホックを指揮した後、2000年にJ2大宮の監督に就任した。大宮では通算5年間にわたって監督を務め、その後、札幌やヴィッセル神戸、ヴァンフォーレ甲府も指揮した。そして2014年5月から2年間はベトナム代表監督、さらに2022年にFC岐阜の監督を務めた後、今年3月にU-20タイ代表監督に就任(同年10月に退任)して注目を集めた。

 そして上述した3氏と同じく「プロ選手の経験なし」の監督として注目され、黒田監督に先立ってJ1で結果を残しているのが、現セレッソ大阪の小菊昭雄監督である。1975年生まれの48歳。滝川第二高校から愛知学院大学へ進み、アルバイト採用でC大阪の下部組織のスクールコーチに採用されて指導者の道をスタートさせたという異色の経歴。その後、スカウト担当として香川真司を入団に導き、強化部スタッフなどの仕事を経て、2005年からトップチームのコーチに就任して実績を積んで信頼を得ると、2021年シーズン途中の8月にレヴィー・クルピ監督の解任に伴ってトップチームの監督に就任した。すると、すぐに優れた手腕を発揮。規律の取れた守備とハードワークの徹底でチームを立て直すと、翌2022年も若手を積極的に起用しながらリーグ戦5位と安定した戦いを繰り広げ、ルヴァン杯では2年連続の準優勝を果たした。今季も現在6位で、大阪ダービー5連勝でもサポーターのハートも掴み、ベンチから指揮する姿にはすっかり風格が漂うようになっている。

 今後、黒田氏や小菊氏の監督としてのキャリアアップが注目されるが、世界のサッカー事情を見ると、「プロ選手未経験の監督」というのは珍しいものではなくなった。その筆頭は、優れた統率力で数々の実績と伝説を残しているポルトガル人のジョゼ・モウリーニョ監督だ。ボビー・ロブソン氏の下でコーチとして経験を積んだが、当初は通訳としての採用。そこからポルトで欧州王者に輝き、チェルシー、インテル、レアル・マドリードなどを率いて常にクラブに勝利とタイトルと届けた。

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日本にはもっと“異色の経歴”の監督が必要?