その他にも、「ゾーンプレス」戦術を確立させてACミランやイタリア代表を率いたサッカー史に残る名将アリゴ・サッキは靴のセールスマンとして働きながら独学で指導者の道を切り拓いた人物。セリエAで実績を残すとともに日本代表監督も務めたアルベルト・ザッケローニや、ジョゼップ・グアルディオラが師と仰ぎ、ヴィッセル神戸の監督も務めたフアン・マヌエル・リージョ、「ゲーゲンプレス」の礎を作ったラルフ・ラングニックといった面々も選手としてはアマチュアの経験しかない。さらに、ナポリで賞賛されて現在は鎌田大地の所属するラツィオを率い、高度なポゼッションサッカーで戦術家として名高いマウリツィオ・サッリ監督は元銀行員だ。さらに若手指揮官に目を向けても、現在ドイツ代表を指揮する36歳のユリアン・ナーゲルスマン、伊東純也と中村敬斗が所属するスタッド・ランスを指揮する31歳のウィル・スティールもプロ選手ではなかった。

 日本サッカー界に話を戻すと、海外組の増加によって選手の基準がレベルアップしている一方で、日本人の指導者、監督の力量が不足していることは、やはり明らかである。今後、選手としてW杯や欧州リーグを経験した元選手が監督として経験を積むことに加え、プロ選手未経験でも優れた指導力、戦術、理論で結果を残して“成り上がる”監督が次々と出現すること。その仕組みが出来上がること。それを認め、寛容する社会になること。日本サッカー全体として取り組むべき課題はまだまだ多いが、黒田監督や小菊監督の“成功”は、そこに大きな一石を投じるものになるはずだ。(文・三和直樹)
 

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