当然のことながら、需要超過となってインフレは加速し、人手不足にも拍車がかかる。その対策の原資は「成長の果実である税収増」だと言うが、日本の財政は多少の増収ではとても均衡しない大赤字が続いている。対策でばらまきをすれば、しなかった時と比べて国債がその分さらに増加する。
政府の借金の利息支払いが増えると困るので、日銀は金利の上昇を抑えなければならず、そのために国債を大量に買い取る。金利は上がらないから円安状況は改善できない。少子高齢化や産業競争力喪失に悩む日本が財政赤字を無制限に増やすつもりだとなれば、「日本売り」のさらなる円安が激化するのは時間の問題である。
それは今もインフレに苦しむ庶民と原材料高と人手不足に苦しむ飲食店などを含む内需型企業にさらなる打撃を与え、「円安地獄」の火に油を注ぐことになるだろう。
一方、さらなる円安は、外貨建て資産に投資している富裕層を喜ばせ、トヨタなどの輸出企業に濡れ手で粟の利益をもたらす。先日出会ったある80代の女性には、「外貨建て投資をしているから、インフレも心配ないわ。円安はむしろ嬉しいの。外貨資産で儲かって、それで海外旅行を楽しめるからね。古賀さんも早く外貨建て投資しなさいよ。早くしないと後悔するわよ」と忠告された。