やまざき・まさひろ/1967年、大阪生まれ。戦史・紛争史研究家。著書に『中東戦争全史』(朝日文庫)など多数

──山崎雅弘さんは、著書『中東戦争全史』などで「ハマスとイスラエルの軍事衝突は単純な二項対立では読み解けない」と指摘されています。

政治的には都合がいい

 一般的に、戦争や紛争は「A国対B国」という二項対立で語られます。しかし、ガザにおけるハマスとイスラエルの対立と紛争は、パレスチナ対イスラエルという二項対立では説明できません。ハマスとネタニヤフ政権は、表面上は対立しつつ、その衝突の恒常化で「共通の利益」を得ている面があります。

──どういうことでしょう。

 ネタニヤフ政権がイスラエル国内で権力基盤を強化しているのは、パレスチナ側に譲歩しないという強硬姿勢が支持された結果です。従って、譲歩して緊張関係を解消するよりも、現在のような対立が恒常化した方が、政治的には都合がいい。それはハマスも同じ。ガザ地区が平穏な状態になれば、ハマスへのガザ市民の支持は急激に下がると考えられます。

 つまりネタニヤフ政権もハマスも、対立関係が続くことで結果的に「利害の一致」が生じているわけです。相手側を攻撃して「強硬姿勢」をアピールすることで、それぞれの国内的な権力基盤が強化され、融和を望む勢力の発言力が低下する。ガザの紛争がいつまでも終わらない理由として、こうした歪(ゆが)んだ構図は無視できないと思います。(編集部・野村昌二)

AERA 2023年11月6日号より抜粋

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