
1300人の命というこの壊滅的な犠牲は、人口1000万人に満たないイスラエルにとって深刻な打撃です。仮にイスラエルの12倍の人口を抱える日本で考えると、1万5000人の命が失われるのと同規模の悲劇を意味します。
先日、イスラエル南部地域への連帯訪問で、人口3万人の町・オファキムの市長イツィク・ダニノ氏と話す機会がありました。彼は、10月7日の朝に町が経験した悲惨な時間について語りました。休日の午前7時30分頃、ハマスのテロリストグループ2つが街中に侵入し、ランダムに建物に押し入り、住民に向かって無差別に発砲しました。人々は自宅に避難しましたが、テロリストは住宅に強制侵入し、なかには素手や包丁など何でも使って襲撃者と勇敢に戦った人もいましたが、多くの住民は人質となり、 軍がテロリストを無力化して人々を解放するまでに5時間を要しました。この間ハマスのテロリストの手によって48人の罪のない命が奪われました。
テロ行為で恐怖を広めることに加えて、ハマスの邪悪な目的の一つは、民間人を拉致することであり、残念ながら、彼らは220人以上の拉致に成功しました。この中には、30人以上の子供たち、乳幼児や12歳未満、および認知症に苦しむ85歳の女性なども含まれていました。これらの罪のない命はガザに連れて行かれ、未だ彼らの所在のほとんどは不明です。
無実の市民を誘拐するという行為は、ハマスにとって3つの極悪な目的を果たしています。第一に、ホロコーストを経験しユダヤ人の命の保護に非常に敏感なイスラエル国家に、計り知れない苦痛を与えます。ヘブライ語で「ピディオン・シュヴイン」として知られる捕虜(拉致被害者)の解放は、ユダヤ人の宗教的命令において中心的な位置を占めています。
第二に、ハマスはこれらの拉致被害者を、イスラエルによる反撃の際の「人間の盾」として利用することを目指していると考えられます。イスラエル軍がガザでハマス当局者による悲惨な虐殺の責任を追及する報復行動を行っているなか、ガザ内に拉致被害者を保持することで一定の攻撃回避が得られます。この戦略はハマスがガザ地区の病院を活動拠点として利用していることなどにも見られます。イスラエルがそのような人道的拠点を攻撃標的にすることを控えるという性質に基づいています。