父が歯科医だったので、私も大学の歯学部に入って歯科医師免許も取ったのですが、馬術が好きで、世界のトップレベルの技術が吸収したくてオランダに渡ったんです。
そこで、オランダ人の男の子が飼っていて「要らなくなった」という「トゥルボ」という雄の子猫が、私のいた厩舎に“ネズミ捕り”として引き取られて。私にとても慣れて部屋で一緒に暮らすようになりました。「猫も可愛いな」とその時に初めて思いました。
トゥルボは私の部屋では食べているか寝ているかでしたが、練習に明け暮れる私を癒してくれました。ねずみもプレゼントしてくれて(笑)。
でも、私が一週間くらいイギリスに(馬のオークションの手伝いで)出かけた間にいなくなって。その後、私がドイツに移ることになり、「もう会えないか」と諦めていたら、ある朝、藁の上で丸くなって寝ていた! あの時のうれしさは今でも忘れません。トゥルボが戻るのがもう数日遅かったら……と思うと、“縁”を感じずにはいられませんでした。
「トゥルボをドイツに連れていきたい」と厩舎のオーナーに相談すると、「由希子の猫だから連れていっていいよ」と言ってくれました。
うまくなりたい、その一心で馬術トレーニングをこつこつ頑張った私は、34歳の時にドーハのアジア競技大会(馬場馬術)に出場し、個人で銀メダル、団体で銅メダルを獲得しました。
メンタル面を支えてくれた「トゥルボ」の力も大きかったと思います。
その「トゥルボ」が8歳の頃(2010年)、一緒に日本に戻りました。
「トゥルボ」はその5年後に老衰で亡くなりましたが、晩年はウエットフードのスープだけ飲んで、魚や肉の具を残していた。もったいないのでうちの駐車場にいた野良猫に食べさせたんです。すると母に「避妊去勢手術をしないで餌だけあげるのはだめ(無責任)よ」と言われました。私はそういうことを知らず、「野良猫には触れないけど、避妊ってどうするの?」と思ったものです。調べると、行政で捕獲機を貸し出したり、助成金があるということがわかりました。