安倍政権下、2016年に年間の出生数が初めて100万人を割り込み大きな話題になった。あれから少子化は歯止めがかからず、2022年には80万人割れを記録した。なぜ政府は有効な対策を打てないのか。背景には時代錯誤の家族観がある。小塚かおる氏の新著『安倍晋三 VS. 日刊ゲンダイ 「強権政治」との10年戦争』(朝日新書)から一部を抜粋、再編集して解説する。(肩書は原則として当時のもの)
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2017年9月、安倍晋三首相は「国難突破解散」に踏み切った。ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の脅威と少子高齢化が進む日本の現状を、「国難」とまとめる強引さと、追及が続いていたモリカケ問題から逃れ「リセット」するための口実として「少子化対策」が使われたことに、「選挙のためなら何でも利用する」安倍政権の本質を見たものだ。
第2次安倍政権発足の2012年から退陣の2020年で、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す指標)は1.41から1.33に低下した。もちろんそれ以前から、少子高齢化は日本が抱える深刻な課題のひとつであることは間違いなく、安倍政権もスタート直後から少子化対策メニューを並べたが、唖然だったのはこれだ。