安倍氏の考えでは「父と母がいて子どもがいる」のが「しっかりした家族」。なぜ共働きなのかという経済実態や多様性が進む社会実態からかけ離れた理想論や時代錯誤の家族観を語っていた。
安倍首相が「3年間、抱っこし放題」と言っていた頃は、年間の出生数が初めて100万人を割り込み大騒ぎだったが、あれから10年も経たない2022年には、80万人割れだ。それで岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」をまとめると急に言い出したのだが、加速度的に進む少子化の実態を表す数字が出る度に慌てて総花的な対策をまとめる、ということを繰り返している。伝統的家族観から抜け出せない政権では、何をやっても前に進まない。
「女性活躍」は労働力が欲しいだけ
女性は家庭に、という家族観の安倍首相が打ち出した「女性活躍」には、社会の意識変化を促すような女性の積極登用ではなく、別の目的があった。
「労働力の確保」である。
少子高齢化による人口減少は、イコール生産年齢人口の減少であり、「産めよ増やせよ」が間に合わないならば、家庭内に押しとどめていた女性たちにどんどん外に働きに出てもらって、労働力を補おうということだ。「女性が輝く日本へ」というスローガンを掲げたのは、女性を「眠れる資源」「含み資産」と捉える観点から、女性の活用が経済成長に不可欠と考えたからだった。