現実に即さないピント外れ以上に、この問題の根深さは、安倍首相が「3年間、抱っこし放題」と言えば、女性たちが大喜びするだろうと疑っていなかったことだ。

「3年」という数字がなぜ出てきたのか。「三つ子の魂百まで」のことわざに倣って、お母さんは子どもが3歳になるまではずっと一緒に過ごした方がいい。それが一番の幸せ─みたいな感覚が根っこにあるからだろう。

 安倍氏は2006年に出版した著書『美しい国へ』(文春新書)で、少子化について次のように記している。

〈従来の少子化対策についての議論を見て感じることは、子どもを育てることの喜び、家族をもつことのすばらしさといった視点が抜け落ちていたのではないか、ということだ。わたしのなかでは、子どもを産み育てることの損得を超えた価値を忘れてはならないという意識がさらに強くなってきている〉

〈同棲、離婚家庭、再婚家庭、シングルマザー、同性愛のカップル、そして犬と暮らす人……どれも家族だ、と教科書は教える。そこでは、父と母がいて子どもがいる、ごくふつうの家族は、いろいろあるパターンのなかのひとつにすぎないのだ〉

〈子どもたちにしっかりした家族のモデルを示すのは、教育の使命ではないだろうか〉

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