「3年間、抱っこし放題です」──。

 13年4月に打ち出したアベノミクス3本の矢の3番目の成長戦略で、その中核に「女性活躍」が位置づけられた。具体策のひとつが「3年間の育児休業」。安倍首相は成長戦略についてのスピーチで、法定育児休業を現行の最長1年半から3年に延長すると語った後、得意げに「3年間、抱っこし放題です」と発言したのだ。

 直後から議論百出だったが、多くの働く女性が感じたのは、「安倍さん、その感覚ズレていませんか」だった。

 働く女性にとっての最大の悩みと不安は、育休明けに自分の職場で居場所はあるのか、積み上げてきたキャリアを持続できるのか、という点にある。そのことが原因で出産を躊躇する人は少なくない。晩婚化の一因でもある。

 そうした不安を解消するには、保育施設の充実など早期に職場復帰できる環境作りや、幼い子を抱えていても当たり前にキャリア形成ができるような職場の理解と受け入れ態勢が何より重要だ。3年間もゆっくり育児に専念していたら、元の職場に復帰することは極めて難しい。

 さらに、育休中はほとんどが無給で、雇用保険に加入していれば育児休業給付金をもらえるものの給付額は賃金の半分だ(2013年時点)。共働きで家計を支えている夫婦は、片方が3年間も休んでいたら暮らしていけない。そんなこともわからないようでは、安倍政権が少子化対策に本気で取り組もうとしているとは思えなかった。

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