経営陣に恥をかかせないことを最優先
木目田氏は、株主総会対応など法務対応もそつなくこなし、有能な弁護士と評価されている。だが郷原氏から見ると、それが失敗につながった可能性もあるという。
「2回目の会見は日本型株主総会のスタイルに似ており、それは、木目田弁護士の発想に近いように思えました。つまり、時間制限を設け、株主の質問をコントロールし、経営陣に恥をかかせないことを最優先にするやり方です。木目田弁護士は2回目の会見で、東山さんと井ノ原快彦さんを株主総会での会社経営者に見立てたのではないでしょうか。時間無制限で記者の質問に応じると、2人の負担は大きくなります。しかし逆に、世論の批判は少なくなり、ジャニーズの看板を守ることにつながったはずです」
危機管理は、まさに修羅場だという。
「クライアントである経営者個人におもねることなく、組織を守るためには何が最優先かを考え抜かなければなりません。『1人の法曹家』として覚悟と矜持を持って事に当たれば、日大やジャニーズの“不祥事”の展開は違ったものになっていた可能性があります」(同)
結局、ジャニーズ事務所の危機対応に欠けていたものは、何だったのだろうか。
「問題の本質をえぐり出すことが、決定的に欠けていたと思います。特に『メディアの沈黙』について、事務所側の関与は明らかになっていません。メディア対応の中心だったと言われる白波瀬傑前副社長の問題には全く触れていないのです。それでは問題の本質は明らかになりません。にもかかわらず、問題にフタをしてしまおうとしたところが、そもそもの間違いだったと思います」(同)