地方の国公立大学は研究費の減少に苦しみ、疲弊している。生き残るために何が必要なのか。AERA 2023年10月23日号より。
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現在、全国に国立大学は86、公立大学は100大学ある。少子化の加速とともに、多くの大学が直面しているのは、厳しさを増す財政事情だ。
分岐点は04年。国が国立大学を独立行政法人化し、人件費などに充てられる運営費交付金を減らし始めたことだ。04年度は1兆2415億円だったが、22年度は1700億円減の1兆675億円に。そのうち、東大など旧7帝大と筑波大、広島大、東工大の計10大学で全体の42.1%(約4500億円)を占有していて、小規模大学まで十分に行き渡るだけの予算がないのだ。
同時に、研究資金は公募・審査を通じて各大学が競争して獲得する形に変更されたこともあり、最新設備のある大規模大学や強い個性のある大学など、ほんの一握りのトップ大ばかりが潤う構造が生まれてしまったのだ。
著書に『「大学改革」という病』がある徳島大学の山口裕之教授(フランス近代哲学)は、
「学生が何を学びたいかではなく、とにかく大学運営の財源を確保するために国からの予算が取れそうな学部再編計画を作成して提出するようなことが、全国の国立大で頻繁に行われている」
と指摘。山口教授自身の教育研究費もこの20年で3分の1になり、今年度はわずか十数万円だという。
「学会に研究費で行くのはあきらめました。大学全体にお金がなくて、夏場はエアコンを28度に設定し、さらに使用を制限するなど涙ぐましい努力をして、なんとか運営している状態です」(山口教授)
裾野広げる必要性
だが、そんな状況を見て見ぬふりをするかのように、9月、世界トップレベルの研究力を目指す「国際卓越研究大学」の初めての認定候補に東北大学が選ばれたことが発表された。来年度中に正式認定された後、政府がつくった10兆円規模の大学ファンドから支援を受けるという。
東大、京大が選から漏れたことばかりが報じられたが、鳥取大の森川修教授は、
「有名大などごく一部だけにお金をかけるのは間違っています。まずは裾野を広げることが大切。地方を削ったら、トップだって倒れてしまう」
と指摘。徳島大の山口教授も、
「Jリーグだって選手育成の裾野を広げたから、日本代表が強くなった。大学も同じです」
と話す。
金沢大学の大竹茂樹融合学域長(副学長)は、危機感を口にする。