キリンHDのインターンシップでは、実際のブランドや事例を取り上げながら、参加者が課題解決に向けた提案をする(写真:キリンホールディングス提供)

 学生の就活スタート時期が年々早まっている。コロナ禍の時期には控えられていた対面イベントが各地で復活した今年は、ますます早期化に拍車がかかっているという。AERA 2023年10月23日号より。

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 企業が学生を囲い込むための動きは年々活発化している。では、学生の就活は楽になったのかというと、そうでもない。多くの学生は、早い時期からインターンシップなどのイベントに参加して、企業との接点を持っている。就職情報会社ディスコ研究員の松本あゆみさんは言う。

「条件の良い企業、人気企業は、内定の競争率が高い。そうなると、しっかり事前の準備をしなければいけません」

 ディスコによると、大学3年の11月までのインターン等の参加率は、13年卒は44.2%だったのに対して、24年卒は91.4%まで上がった。「3年の夏のインターン=就活のスタート」というのが、もはや常識になりつつある。

 以前なら、大学3年の夏といえば、サークルで中心的な役割を担い、アルバイトに精を出して「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」を作っていく時期だった。だが、都内の難関私立大学3年の女性は、10社のインターンに応募して、3社に合格。夏休みのうち20日間をインターンに費やしたという。

「夏休みっていう感じがしなかったです。もう一回夏休みがほしいです」

 インターンへの注目が高まるなか、政府は今年からインターンのルールを変更した。「5日間以上」などの条件を満たした場合、「採用に直結」できることを正式に認めたのだ。

 キリンHDは今年、一部のインターンの日数を5日間に設定した。ルール上、インターンで得た情報を採用に直結できるが、「インターンに参加=即採用」ではないという。同社人財戦略部の今井美緒さんが説明する。

「インターンでのグループワークを通して本気で取り組む姿やその成長過程などを総合的に見ながら、もう一度会いたい学生さんには、面談をしたり、早期選考に参加いただいています」

 インターンは、学生と企業の双方が、理解を深める場だ。キリンは、ビール会社というイメージがあるが、強みはそれだけではない。食・ヘルスサイエンス・医領域にわたってユニークな事業ポートフォリオを知ってもらうチャンスだ。今井さんは言う。

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