コロナ禍の中、一部のレストランなどに屋外席が許可されたロンドンの街(Getty Images)
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 批評家・哲学者であり経営者でもある東浩紀氏が、現代の日本社会で生きるための術を綴る新刊『訂正する力』を刊行。東氏は同書の中で「訂正する力」とはものごとをまえに進めるために、現在と過去をつなぎなおす柔軟な力だと定義する。同書から一部抜粋、再編集し、日本とヨーロッパの事情を比較した東氏の見解を紹介する。

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ヨーロッパのしたたかさ

 訂正するとは、一貫性をもちながら変わっていくことです。難しい話ではありません。ぼくたちはそんな訂正する力を日常的に使っているからです。

 この点でうまいなと思うのは、ヨーロッパの人々です。彼らを観察していると、訂正する力の強さに舌を巻かざるをえません。

 新型コロナウイルス禍を思い出してください。イギリス人の「訂正」にはすさまじいものがありました。大騒ぎしてロックダウンをしたと思いきや、事態があるていど収まると、われ先にマスクを外していく。「自分たちはもともとコロナなんて大したことないと気づいていた」と言わんばかりです。「いや、そうだったかな」と思わずにはいられないですが、彼らはあたかもそれが当然だったかのように振る舞います。

 日本人からすると「ずるい」と感じるかもしれません。スポーツでもしばしばルールチェンジが問題になっています。

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ヨーロッパ的な知性のありかた