石崎弁護士は、
「例えばラーメン店では食べ終わった後の丼をカウンターに上げてと明示している店もあれば、そのままにして欲しいと書いている店もあり、店それぞれにルールが違います。不特定多数が訪れるのですから、店側がまずはルールをきっちりと明示して、分かりやすくしてあげる配慮をすれば、こうしたすれ違いは起きにくくなると思います」
と指摘する。
店側に言葉の配慮あれば
また、丼にティッシュを入れる行為が「器物損壊罪」に当たる可能性を指摘する声もある。
石崎弁護士は、物を壊さなくても、例えば汚物をかけたりペンキを塗ったりして使えなくするだけで器物損壊が成立する点に言及。過去には、飲食店で食器に放尿した客の行為が、食器の効用を失わせたとして器物損壊と判断された判例が存在する。
そのうえで、
「では、口を拭いたティッシュを丼や皿に入れたことが器物損壊に当たるかというと、体液や汚物をそのまま入れたわけではありませんから、個人的には考えにくいのではないかと思います」
と解説する。
SNSで続発する「客vs.店」の激しいやり取り。石崎弁護士が懸念するのは、ネットリテラシーの問題だ。
「店も客も、不満などをすぐにSNSに投稿するうえに、とても強い言葉を使う傾向があります。だから、起きた出来事自体は大きな問題ではないのに、やたらと炎上してしまう。ラーメン店や居酒屋は身近な存在で、多くの人の関心が集まりますから、言葉の応酬になりがちですよね。今回の件も、『配慮はありがたいのですが、スープが捨てにくくなるためご遠慮ください』などと丁寧な言葉で投稿すれば、何の問題にもならなかっただろうと思っています」
言葉に少しの配慮があれば、無用な争いは生まれないのかもしれない。
(AERA dot.編集部・國府田英之)