休日の桂ゆかりさん。後ろにいるのが夫と子どもたち=2023年10月、埼玉県のショッピングモール

――結婚されたのはいつですか?

 ポスドク1年目です。彼は応用化学科の同級生で、メーカーに就職しました。一緒に学生実験をよくやったんですけど、私が失敗しても楽しそうに笑っていたので、私はへこまずに済んだ。ケンカを買わないところがすごいんです。だから何でも一緒に楽しんでやっていけそうだなって思って。実際そうでした。楽しそうに家事と子育てをやっています。

うまくいくようやり方を変える

――どんなふうに?

 平日は夫が子どもたちの朝食の準備をします。私がやり残した部屋の後片付けもして、土日は朝、昼、晩の食事を全部作り、少年団の手伝いをして、子どもたちを明るく楽しませながら宿題や学校の準備を見てくれています。

 私は研究者として、マニュアル通りではなく、うまくいくように理詰めでやり方を変えちゃうことが結構多いんですよね。だから、子育てもマニュアル通りでなく、目的を達成するやり方を自分で考えています。子育てには理想がたくさんあって、全て完璧にできればいいんだけど、それは難しい。一番大事なのは子どもが自分や他人の命を守れるようにすることだと思うんです。本当に危ないときに危ないって理解してもらうには、そういうときだけ大人が怖く怒りだすのがわかりやすい。だから、小さいうちは些細なことではなるべく怒らないようにしていました。

 また、注意するときにはできるだけ正しい理由を探すのが大事だと思いました。たとえば、散歩していて、子どもがよそのうちの植木の枝をプチっと折ったとしますよね。そのときに大人が言いがちなのは「木が痛い痛いでしょ、かわいそうでしょ」みたいなことですが、これだと後で矛盾するんですよ。植木屋さんが登場したときに(笑)。だから正しい理由は「このおうちの木だから折っちゃだめだよ」で、それを一瞬で思いつくようにしないと。

――え~、それは難しそう。

 はい、難しいです。でも研究者として申請書を書いたりプレゼンをしたりしていると、なんでこれはこうなのか、どうしたら相手に伝わるのかって常に考えている。一番正しそうな理由を探すスピードは身についたような気がします。

――へえ、研究者であることが子育てに役立っていると。

 はい、完全につながっているように感じています。子どもが4歳くらいになると「なんで、なんで」ってよく聞くと思うんですけど、そこで適当な理由を作ってごまかそうとしないで、なるべく科学的に嘘のないように教えるようにしたんです。そうしたら子どもたちは、私の教えた法則を組み合わせて、教えていないことでも「なんで」って聞く前に勝手に理由を推測してくれるようになってました。

料理もはじめはシンプルに

 料理については、手作りが大事だという考え方もあるし、手料理も作っています。でも同時に、子どもたちが自分で料理を作れる自信を持つのも大事だと思い、簡単に作れておいしい料理を教えました。小1ではカレーライス。これは炊飯器のご飯に冷たいレトルトカレーをかけるだけです。小2では冷凍パスタ。これで電子レンジの使い方をマスターできました。小3では冷凍おかずセット。小4ではひき肉を塩だけで炒めただけの料理。はじめは最小限の材料でシンプルに作らせて、ほかのものを入れたらもっとおいしくなるかも、って想像させてみることで、「ジャガイモを細かく切っていれてみよう」「固めてハンバーグにしよう」など、自分で考えて工夫しながら楽しく料理してくれるようになりました。

――なるほど。

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