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 定年退職したあと、一緒に人生を楽しめる友達はいますかー? 定年後、特に男性は友達作りに難儀し、悠々自適どころか逆に寂しい生活を送ってしまう人が少なくない。現役世代でも、会社や仕事関係にしか人づきあいがない人は、孤独生活の予備軍かもしれない。なぜ、友達ができないのか。どうすればいいのかーー。定年後や老後の「孤独問題」に詳しい精神科医に実態と「処方箋(せん)」を聞いた。

【データ】年齢によってまったく違う「孤独感」。1位となった年代は?

 ある企業で管理職を務めていた男性Aさんのケース。

 定年を迎え、職場で送る会を開いてもらった際、元部下からこんな温かい言葉をもらった。

「会社の近くに来ることがあったら、ぜひ寄ってくださいね」

 退職後はのんびり暮らしていたAさんだが、3カ月もするとそんな生活に飽きてきた。

「一緒に遊ぶやつもいないし、やりたいことも、行くところもないな」

 そんな時に、思い出したのが元部下の言葉。Aさんは人とのつながりを求め、かつての職場へと向かった。

だが……。

元部下の本音は

 受付で過去の肩書と名前を伝えたが、受付の担当者が替わっていて、自分が誰なのか把握してくれていなかった。かつて在籍した部署に連絡してもらうと、あの元部下がやってきて、よそよそしそうに5分ほど立ち話をしただけで去っていった。温かさはこれっぽっちも感じられなかった。

 あとになって、この元部下が職場で発した言葉を、人づてに聞かされた。

「Aさん、本当に来ちゃったよ……」

 もう、まったく気にかけてくれない。その現実を知ったAさんは、“海よりも深く”傷つき、孤独感にさいなまれたという。

「特に男性は、Aさんのように定年後に友達ができず、孤独に陥っている人がたくさんいます。退職が区切りにならず、元管理職だから、OBだからこれからも温かく迎え入れてくれるだろうと、過去との連続性を勝手に持たせてしまう傾向が強いのです」

 そう指摘するのはこうした定年後や高齢者の「孤独問題」に詳しい精神科医の保坂隆さんだ。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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