15年、ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利はスポーツ史上最大の番狂わせとも言われ、オーストラリアで映画化もされた(写真:AFP/アフロ)
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 サッカー、ラグビー、バスケットボール……。近年、日本スポーツは世界の強豪と渡り合えるレベルまで躍進した。その要因の一つとして、外国人コーチの存在が挙げられる。AERA 2023年10月16日号より。

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 ラグビー元日本代表で神戸親和大学教授の平尾剛さんは、外国人コーチの手腕で選手の意識が大きく変化したと指摘する。

「かつては多くのスポーツで代表選手自身が世界を仰ぎ見ていました。ラグビーでも私が99年W杯に出場したころは、強豪国相手に『何とか善戦できれば』という意識があった。3戦全敗でした。しかし、エディ・ジョーンズが完全に風土を変えた。ハードトレーニングと同時に勝つためのビジョンと意識を植え付けました。あの南アフリカ戦から8年がたち、今の代表選手は世界の強豪と渡り合うことをもはや当たり前にとらえています」

 日本スポーツの風土が変わりつつあることも見逃せない。外国人コーチたちの存在もあり、体育会的な縦割りの上下関係にも変化がみられるという。

「選手として活躍した日本人がそのまま指導者になると、選手時代の上下関係に引きずられやすい。選手はコーチに意見できないし、選考にも無意識の影響があったはずです。しかし外国人指導者のもとでそれがリセットされ、大学スポーツなどでも固定化された上下関係を壊そうとする動きが広がりつつあります。上下関係が小さくなれば多様な意見が出てコミュニケーションが深化します。戦略面でも戦術面でもチームに良い影響をもたらすはずです」(平尾さん)

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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