14年以降、ポストシーズンに進出できていないエンゼルスは、今季も73勝89敗で勝率.451(30球団中25位)と、不甲斐ない成績に終わった。大谷の無双ぶりとは、あまりに対照的だ。エンゼルスは、長期にわたって活躍が見込める有望な若手が育っていないという慢性的な問題を抱えている。これは短期でどうにかなる問題ではない。
多くの人が有力な移籍先候補として挙げるのが、ロサンゼルス・ドジャースやシアトル・マリナーズ、サンフランシスコ・ジャイアンツなど、気候が良くて日本に近い西海岸にあり、戦力と資金にも恵まれた球団だ。特に最有力と目されるドジャースは、大谷獲得に備えて昨年の補強を控えたと言われるほどだ。高校卒業時とメジャー移籍時にも大谷獲得を狙っていたドジャースに三度目の正直はあるのだろうか。
愛されキャラ?
私がもう一つ違和感を感じている日本の報道が、大谷のキャラクターについてである。
大谷の一挙一動を追う日本のメディアは、大谷のささいな仕草やチームメートとの交流、そしてそれがいかに現地ファンに好意的に受け取られているかを報じている。私も取材を受けるたびに、グラウンドのゴミを拾う大谷の礼儀正しさが、いかにアメリカ人に愛されているかを聞かれる。
だが実際は、大谷のキャラクターについては、現地ではほとんど話題になっていない。
確かに関係者や熱心なファンに聞けば、「真摯に野球に取り組んでいる」「常に笑顔」「スターなのに謙虚」などというポジティブな答えは返ってくる。
球場やテレビでの観戦は欠かさない熱狂的な大谷ファンだというジェニー・ムーアさん(48)は、大谷は高校生の息子にとって理想のロールモデルだと語る。プレーはもちろんのこと、何より「立ち振る舞いが素晴らしい」と言う。
「翔平は特大ホームランも打ちますが、三振することもあります。でも、かんしゃくを起こしたり、バットを叩きつけたり、審判をにらみつけたりはしません」
ただし、ムーアさんのように大谷を注視していなければ、たとえ野球ファンであっても、キャラクターについては、「知らない」「気にしていない」という人がほとんどだ。少なくとも「そのキャラクターがゆえに人気の選手」だとは言えない。