「結局、ジャニーズ事務所の新会社も、タレントとマネジメント契約のような形を結ぶのではないかと思います。タレントは今より縛りは緩くはなると思いますが、新会社以外の仕事はやれないと思います。そうなると、今までと何が違うのかわからない。『エージェント』という、カタカナ用語でイメージアップを図っているだけではないかという穿った見方もできます」
さらに、ジャニーズ事務所に代わる「スマイルアップ」についてデーブさんは、ジャニー氏がまだ生きている2018年に立ち上げた慈善事業団体「ジャニーズ・スマイルアップ・プロジェクト」に由来する名称だと指摘する。
「ジャニーズ事務所とのつながりをキープさせておきたい、そんな感じがします」
補償額は一律にすべき
2時間余の会見で衝撃が走ったのが、被害者の多さだった。ジャニーズ事務所が被害補償の窓口を設置してわずか半月ほどで、325人が補償を求めていると明らかになったのだ。
東山氏はこう言った。
「これほどだったのかという思いが強い」
「被害者の方に寄り添う形をきちっとつくっていきたい」
補償は11月から始めていくというが、その額は明らかにしなかった。
性被害者の支援に取り組む上谷(かみたに)さくら弁護士によれば、性被害の民事訴訟の場合、当時の基準(強制わいせつ)を用いるなら数十万~200万円程度、現在の基準なら300万円程度になるという。
「ただ、今回のケースでは、被害者間で被害の大小を認定することは困難だし、算定に時間がかかると思います。また、補償額が公になった時、なぜ金額に差があるのか、ということで紛糾するかもしれません。それを防ぐためにも、補償額は一律にするのが最も適切と思います」
その上で、「心理的ケアも不可欠」と上谷弁護士は話す。
「性犯罪被害者は、フラッシュバックに苦しめられます。そのためにも、性被害に精通し適切に治療ができる専門家が治療に当たることが重要です」
さらに性被害の場合、まだ自覚がなく、過去の事実に蓋をしている人も多くいる。上谷弁護士は、「被害者の認定は期限を設けるのではなく10年、20年後も受け付けるようにすべきだ」と指摘する。
「いずれにしても経済的補償と心理的ケア、両方が大切です」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2023年10月16日号より抜粋