ジャニーズ事務所が再出発を誓ったが、エージェント契約や被害者への補償など、課題も残る。AERA 2023年10月16日号より。
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最初に発表されたのは、過去との決別と、新社名だった。
「故・喜多川氏と完全に決別する決意を示すため、社名を10月17日付で、『SMILE-UP.(スマイルアップ)』と変更していきます」
ジャニーズ事務所は10月2日、都内で2度目の記者会見を開き、社長の東山紀之氏(57)は語った。
スマイルアップは、故ジャニー喜多川氏による被害者への補償業務のみを行う。社長は東山氏、前社長の藤島ジュリー景子氏は100%株主として残るが、被害者への補償終了後に廃業するとした。
さらに、約1カ月以内にエージェント契約を行う新会社を設立し、希望するタレントやグループと個別に契約を結ぶ体制を整える。新会社の社長は東山氏、副社長にはタレントでジャニーズアイランド社長の井ノ原快彦氏(47)が就任する。新会社の社名は、ファンクラブからの公募で決めるという。前回の9月7日の会見で不十分だと指摘された「解体的出直し」をアピールした形だが、改革の本気度が問われる事態となった。
今までと何が違うのか
まず、日米の芸能界に精通する放送プロデューサーのデーブ・スペクターさんは、「エージェント契約」を疑問視する。
「確かにエージェントは聞こえがいいが、実態は違います。そもそも、日本でエージェント契約は成り立たないと思います」
エージェントとは「代理人」を意味し、主な役割は「契約交渉と仲介」で、マネージャーやPR、ヘアメイクなどはタレント自らが雇う必要がある。米国の映画、音楽業界では主流だ。対して日本の芸能界は、会社が所属タレントの契約交渉や仲介だけでなく、戦略の策定やスケジュールの管理まですべて行うマネジメント契約だ。
デーブさんによると、アメリカでは、エージェントは州の営業免許制で、マージン(手数料)はタレントのギャラの10%以上は取れない法律がある。ただ、これは、アメリカの製作費が日本とはケタ違いに大きいから成立するのだという。日本のエンターテインメントは製作費が安いので、仮にマージンがアメリカと同じ10%だとすると、エージェント会社は経営が成り立たないだろうと見る。