看板メニューの煮干しそばに加え、「いわし丼」を提供することにした。活魚料理の修行で魚料理に精通した吉川さんの知識と技術が生きる時が来たのである。
こうして「よしかわ」は“従業員が魚をさばけなければいけないラーメン屋”になった。
創業3年目には、川越店がオープン。「よしかわ」がオープンしてからもしばらくは同じエリアに競合が出てこなかったことが大きく、一気に客足を伸ばしていった。
吉川さんはとにかくさまざまな魚をラーメンに生かせないか試していった。新しい魚を見つけたらすぐにラーメンを作ってみる。うまくいったものは限定メニューとして提供していった。
「“よしかわ=魚のラーメン屋”として定着させるために、とにかく魚にこだわり続けました。ブレイクしたのは、ブリのあらのスープに漬けのブリを乗せた『ブリそば』を出した頃からでしょうか。いろいろな魚を試しましたが、マンボウだけは苦戦しましたね(笑)」(吉川さん)
海鮮丼やいわし丼のファンも増えてきて、吉川さんの戦略の通りに成長する店となった。
「工場などでの技術革新が職人の技術に追いついてきているので、まだまだレベルを上げていかないと生き残れないと思っています。ですが、魚をさばくのは機械にはできないこと。いかに毎日面倒くさいことをやっているかということなんですが、うちはそこにこだわり続けます」(吉川さん)
価額高騰のあおりを受け、煮干しの仕入れも非常に厳しい状態になっている。特に片口鰯が不漁で厳しく、9月現在で1キロ1500~1700円程度となっていて、もはや高級鶏レベルの価格帯だ。尾道ラーメンお店からの紹介で、広島産の煮干しも取り寄せ、4~5種類をブレンドして味を安定させているという。
「従業員も増えましたし、今後も店舗を展開していきたいと思っています。しっかり利益を残せる店であることが重要です。そして、それぞれの店がフォローし合える距離にあることが大事だと思うので、埼玉県内で広げていくことを考えています」(吉川さん)
次回の記事では、「寿製麺 よしかわ」の店主・吉川さんの愛する名店をご紹介する。(ラーメンライター・井手隊長)