記者会見の終了時にも、指名されなかった記者から質問が続いていた(撮影/写真映像部・松永卓也)

 この担当者は言う。

「まっとうな危機管理担当者なら、指名NGリストを作ることは考えないと思う。たとえば、わが社には新聞社や通信社の元記者や、テレビ局のディレクター経験者がいる。取材者側の立場を理解できるから、いくらクライアントが要望したとしても、危険だと判断するはず」

 今回の会見は米国に本社を持つFTIコンサルティングが引き受け、会見の2日前にジャニーズ事務所側と打ち合わせをしたことがわかっている。

「外資系のPR会社には危機管理の細かいマニュアルがあるはず。クライアントがNGリストの使用に難色を示しているのであれば、勝手にリストを会見場に持ち込むことは我々の常識では考えづらい。リストが発覚した際に大事になることを考え、リストを形に残そうとも思わないはずだ。あくまで推測だが、PRを請け負う立場から見ると、クライアントのどこかのレベルが、NGリストの作成に絡んでいるか、リストを使わないように強く指示はしなかったのではと考えてしまう」

 会見後、NGリストの存在が明らかになると、ジャニーズ事務所は、「今回流出したと言われている資料は、弊社の関係者は誰も作成に関与しておりませんし、指名をしない記者を決める等も全く行なっておりません」とコメントを発表。リスト作成に関与していないとしてFTIコンサルティングに謝罪を求めた。

 FTIは10月5日、謝罪コメントを発表した。

「限られた会場使用時間の中で会見の円滑な運営準備のために弊社が(NGリストを)作成し、運営スタッフ間で共有したもので、ジャニーズ事務所様は作成や運営スタッフへの共有を含め一切関与しておりません」

 ジャニー喜多川氏による性加害事件は、10月2日公表時点で325人が補償を求めるという前代未聞の事態に発展した。今回の記者会見は、被害者への補償を含めた今後のジャニーズ事務所の対応を明らかにするために開催されたものだ。厳しい質問を投げかける記者を排除していては、社会からの信頼回復は遠のくばかりだ。

ジャーナリスト 形山昌由

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