外科医は労働環境が厳しそう……。医学部受験生や医学部生のなかには、そう考えて外科を避ける人がいるかもしれません。現実に、外科医の激減は深刻な問題になっています。しかし、医師の働き方は少しずつですが変わり始めています。その糸口となるのが女性医師の存在です。好評発売中の週刊朝日ムック『医学部に入る2024』では、「消化器外科女性医師の活躍を応援する会(AEGIS-Women)」の会長であり、現役の消化器外科医としても活躍している河野恵美子医師に話を伺いました。同ムックの記事をお届けします。
【グラフ】年数とともに差が大きくなる男女の高難度手術経験数はこちら
28歳で第1子を出産して、2児の子育てをしながら働く、現役女性消化器外科医のインタビューも併せてご覧ください。
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外科医不足が深刻化している。2000年には約1万8千人いた外科勤務医が、20年には約1万500人に激減している。一方で、女性外科医は増えている。ハードワークといわれる消化器外科でも女性医師の割合は4%から6%へ。しかし医師になって10年ほど経つと(おもに30代後半)女性消化器外科医の数は減る。それはどうしてか。
難度の高い手術は女性には向いていない?
「当初は妊娠・出産・育児のせいで減るのかと考えていました。実際にそういった事例は今も多くありますが、それ以外に研修期間から男女の手術トレーニングに格差があることがわかったのです」
そう話す河野恵美子医師は「消化器外科女性医師の活躍を応援する会(AEGIS-Women)」の会長であり、現役の消化器外科医としても活躍している。
22年に河野医師らの研究グループは、消化器外科の6種類の術式における1人あたりの執刀数の男女比に関する研究を発表した。その結果、どの術式でも女性外科医は男性外科医より執刀数が少なく、年齢が増えることによってその差が拡大することがわかった。
「虫垂切除など低難度の手術では男女差は少ないのですが、膵頭(すいとう)十二指腸切除など手術の難度が上がるほど男女格差が拡大します。そしてこの格差がみられるようになるのは医師になって1~2年目、つまり初期研修の段階ですでに男女差がついているのです」