■老後も株式100%?

 なお、全世界株式に連動する投信の中には、日本株を除いたものもある。新NISAのつみたて投資枠でも「eMAXIS Slim 全世界株式(除く日本)」など日本株を除いたものが選べる。

 なぜわざわざ日本株を除いた全世界株投信があるのか。その理由は「特定口座などで別途、日本株をたくさん持っているので、もうこれ以上は日本株に投資しなくていい」というニーズなどがあるためだ。

 新NISAの成長投資枠で日本株に投資したい人もいるだろう。

 そういう人は、つみたて投資枠で「全世界株式(除く日本)」に連動するインデックス型投信をつみたてつつ、成長投資枠で日本株を買うなどすればいい。

 ただ、本誌としては、「どの国がイケていそうか、考える必要もない」のが全世界株式のよさだと考える。よってわざわざ日本株を抜かなくてもいいというスタンスだ。

 新NISAは、極論すると死ぬまで非課税運用が可能だ。だからこそ、老後のどの時点で、どのように新NISAの資産を取り崩して、生活費などに充てていくのかを考えておきたい。

 投資の教科書には「老後は株式の比率を下げ、債券などのローリスクな資産を増やしましょう」などと書いてある。

 全世界株式の投信は、長期運用に役立つとはいえ「株式100%」。ローリスクとはいえない。老後もずっと持っていていいのか?

「一般的には60代、70代になると定期的な収入が減ります。運用で過度なリスクを取ると生活の基盤を失うことになりかねません。

 一方、人生100年時代ですから、老後も一定期間は投資を続けたほうがいい面もあります。重要なのは、預金も含めた資産全体を見て調整することです。

オルカン』に投資しながら取り崩し(売却)をしていくのも、リスクを下げる手法の一つです。新NISAの資産がどのくらいまでならマイナスになっても受け入れられるか、ということも併せて考えましょう」

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野尻広明(のじり・ひろあき)/三菱UFJアセットマネジメント デジタル・マーケティング部グループマネジャー。2011年に慶應義塾大学大学院卒業後、三菱UFJ投信(当時)に入社。投資のようにコツコツと週末に散歩をするのが楽しみだそう

【全世界株式vs米国S&P500の資金流入図の解説】「eMAXIS Slim」シリーズの2大人気投資信託「米国株式(S&P500)」と「全世界株式(オール・カントリー)」の月次資金純流出入額の推移(設定来から2023年6月末まで)。左軸は米国株式と全世界株式を合計した純流入額、右軸は米国株式と全世界株式の各月の純流入額合計に占める、米国株式の純流入額の割合。ここ数年、米国株式と全世界株式の純流入額の比率は8対2ほどだったが、全世界株式が追い上げ、2023年5月と6月は全世界株式が逆転。データ提供/三菱UFJアセットマネジメント

編集/綾小路麗香、伊藤忍

※『AERA Money 2023秋冬号』から抜粋

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。「AERA」とアエラ増刊「AERA Money」の編集担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などの経済関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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