議員会館のナンシーペロシ下院議員の部屋

 また、米議会においても、この対中強硬のトーンに対し、少数であっても一定数のリベラル派(進歩派)は疑問も投げかけている。

 議会関係者との面談を繰り返すうちにこんなエピソードを耳にした。

 議会の主流派ともいえる強硬派が、議会のリベラル派の外交重視姿勢を苦々しく思い、現実を知らしめてやろうと、この春、各議員事務所の安保担当補佐官を集めて米軍のインド太平洋軍司令部訪問団が組織された。米議会では、日本の国会議員秘書に比して、各議員の下で働く補佐官が実際の立法・政治過程で大きな影響力を持っている。その補佐官たちが民主・共和両党から、同軍の司令部のあるハワイをグループで訪問したのである。

 その訪問団に参加したあるリベラル派の議員の補佐官が私に話をしてくれた。訪問団が面談したインド太平洋軍の軍高官が何を言ったか。

 開口一番、「議会、大丈夫か?あまりに強硬すぎないか? もう少し外交も重視してくれ」。

「強硬派が私たちを変えようとして、向こうが釘を刺されたんだよ」と彼は大笑い。

 その後、他の議員の補佐官からも全く同じ話を聞くことになった。リベラル派の補佐官にとっては余程印象に残ったエピソードだったらしい。

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戦う覚悟なんぞあるはずもない