ましてや「あなた、自分のところの子供タレントに変なことしているんですって?」など、訊ける空気などなかったでしょう。
例えば、マイケル・ジャクソンの疑惑が世界中で話題になった時も、日本では「自分たちの社会には関係ない変態の話」として、深刻に捉える人などほとんどいませんでした。
今こうして、ジャニー氏による性被害を訴える男性たちが現れ、彼らの声に世間の耳目が集まっている状況というのは、皮肉にも「男同士の性」の存在が一般化した証でもあるのです。
無論、「ただの同性愛」と「子供への性虐待」は、同列で語られるべきものではありません。しかしながら、マイノリティの存在が認められることによって、初めて社会全体が気づける罪や過ちもある。その典型が今回の事象なのではないでしょうか。
この先ジャニーズ事務所はどうなっていくのか。しばらくすれば、「やっぱり作品や楽曲は素晴らしい」的な再評価という名のバックラッシュが起こるような気もしています。
すでに「子供への性虐待」そのものよりも、ジャニーズが持っていたあらゆる「力」を崩壊させる方に、世間の関心は移っている様子。私のような屈折した性の葛藤など、結局は「あっちの世界でやっててくれ」と言われるだけなのかもしれません。このままでは、せっかく声を上げた「被害者」と呼ばれる人たちの勇気が報われることも二の次になりそうな勢いです。
最後にひとつ。やたらと細かい性描写を口にしたり文字にしたり、人前で話させたがったりする人間や媒体が存在するようですが、事の「非道さ」は伝わるかもしれませんが、そんなことで名前を売ったり、ビューワー数を伸ばしたりしても、「再発防止」には逆効果だということに早く気づくべきです。