大学在学中に二つの会社を設立した坪井俊輔さん。 生きづらさを抱えた中高時代、休学した大学時代を経て、 社会課題の解決に果敢に挑戦している。発売中のアエラムック「就職力で選ぶ大学2024」(朝日新聞出版)より紹介します。
【写真】サグリ代表取締役CEO 坪井俊輔さんがインドで活動する様子はこちら
人工衛星の観測データとAI技術などを組み合わせて農業の課題解決をサポートする。坪井俊輔さんが創業したサグリはそんな新しい試みに挑戦している。
「子どもたちがのびのびと自分の夢を見つけ、それを実現できる世の中にしたいという思いがベースにあって、そのための課題の一つをサグリで解決しようとしています」
事業の柱は、「ACTABA(アクタバ)」というアプリだ。全国の自治体は農地の状況を把握する必要がある。耕作放棄地は課税基準が変わってくるし、ソーラーパネルを設置するなど他の活用法を考えることもできるからだ。しかし、広大な土地を車で回るのは負担が大きい。そこで、人工衛星の観測データを解析し、農地情報を提供するこのアプリが活用されている。
坪井さんは横浜国立大学理工学部に在学中、サグリを設立した。実はその前にもう一社、教育事業を行う「うちゅう」を起業している。その背景には中高時代の苦しい体験があった。宇宙を夢見て、宇宙エレベーターを作りたいと話していたら、堅実な周りの生徒に理解されずに浮いてしまい、生きづらい日々を過ごしていたのだ。
〝王道〟よりも本当にやりたいこと
進学した横浜国立大学では宇宙への思いを胸にテラメカニクス(土壌と機械の相互作用)を専門とする研究室に入り、月面を走る探査機のタイヤの表面設計の研究に取り組んだ。そのかたわら、新しい出合いと体験を求めて短期留学や海外旅行、NPOの活動にも参加。その活動で日本の学校を回ったとき、目の当たりにしたのは消極的で自己肯定感の低い生徒たちだった。
「自分の中高時代と同じだと思い、見て見ぬふりはできなかった。それまでは、研究者として新しい技術を生み出して社会を変えたいと考えていましたが、まず教育の課題を解決しようと動き始めました」
宇宙を題材に、夢を実現できる人を育てようと、うちゅうを創業。さまざまな宇宙教育プログラムを実施した。
「大学に入って行動範囲が広がり、学外、海外といろんな環境とコミュニティーに身を置くなかで、自分のちっぽけな価値観が揺さぶられる瞬間がたくさんありました。起業支援のNPOに参加したときも、何のためらいもなく休学して起業に挑戦する学生ばかりで、“堅実”とか“普通”を気にする人はいなかった。自分も、子どもの教育の課題への使命感に対して、いま行動を起こさなければと思うようになりました」