昨季の全日本ジュニア選手権で2位に入った19歳・片伊勢武アミンの魅力は、流れるようなスケーティングと、どの瞬間を切り取っても美しい体のラインだ。

 コロナ禍により国際大会への出場が叶わなかったシーズンを経て、昨季はジュニアGPシリーズに出場。トリプルアクセルを武器に、ポーランド大会優勝、イタリア大会3位と2戦とも表彰台に上がり、ファイナルにも進出した。

 大河ドラマ「義経」のメインテーマを使った昨季のショートでは、着物風の衣装で滑る片伊勢に、義経のイメージが重なった。全日本ジュニア選手権のミックスゾーンで、片伊勢はこのショートについて語っている。

「この曲をもらった時から、学校では義経について習っていたのですが、もう一回自分で調べたりしました。侍、武将なので強い人だとは思うのですが、その強さの中に綺麗な優雅さや芯の強さ、儚さといった部分が僕には感じられたので、その日本の強さと美しさをこのプログラムで、衣装も含めて表現出来たらいいなと思います」

 悲運の武将である源義経の中に優雅さを見出す感性も、片伊勢の強みだといえるだろう。

 8月のげんさんサマーカップで片伊勢は2位に入り、優勝した三浦佳生(昨季四大陸王者)、3位の山本草太(昨季GPファイナル銀メダリスト)と共に表彰台に立った。GPシリーズでは、第3戦・フランス杯にエントリー。日本スケート連盟のホームページでは「自分にしか出せない魅力を持っている選手になれるよう頑張ります」とコメントしている片伊勢は、シニアでも存在感を発揮すべく今季に臨む。

 4回転を跳ぶ吉岡と、端正な滑りをみせる片伊勢が、日本男子の戦いをさらに面白くする。(文・沢田聡子)

沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」
 

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