そもそも「暮らしが苦しくて大変だ」という庶民の声は、国会議員が肌で感じるべきものだ。週末に選挙区へ帰り、有権者の声を聞くことが重要な仕事であることは言うまでもない。だが、自民党の議員から「有権者は生活苦に直面しているのだから、今は減税に向けて知恵を絞ろう」などの声が出ることはない。

「小選挙区制の弊害でしょう。中選挙区時代の議員は個人事業主のような存在で、支援者との距離は近く、党ではなく派閥に忠誠を尽くしていました。そのため政策や国家観をめぐって首相に意見することも珍しいことではありませんでした。ところが小選挙区制は党の代表として選挙を戦うので、常に党の顔色をうかがわなければ何もできません。個人事業主が小役人に変貌してしまったようなもので、今の岸田さんに物申せるような自民党の議員はいなくなってしまったのです」(伊藤氏)

 このままいけば、「岸田文雄、鬼よりこわい、ニッコリ笑って税をとる」などと歌われるようになるかもしれない。

(井荻稔)

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