たしかに、岸田首相が推し進める防衛増税は「軽武装、経済重視」という宏池会の路線とは相いれない。中国の脅威は無視できないにしても、今の経済状況では、防税増税よりも減税を求める国民が多いのは当然だろう。伊藤氏は「岸田さんはポリシーのない政治家なんです」と手厳しい。
「それはガソリン代のトリガー条項の発動を見送ったことに象徴されています。税金を取って補助金で戻すなんて手間ばかりかかって無意味でしょう。誰が考えても最初から税金を取らなければいいだけの話です。それができないのは財務省が反対しているからで、つまり、岸田さんは財務官僚を抑えられていない。ここで重要なのは岸田さんが財務省出身ではないということです。世襲の三世議員であり、政治家になる前は日本長期信用銀行(現・SBI新生銀行)に勤務していた“お坊ちゃん”です」
岸田首相は自民党内の各派閥に「いい顔」をしようと、派閥ごとの意向を政策に反映させる。そのため、何をしたいのかさっぱり分からない政策がならぶことになる、と伊藤氏は言う。
「岸田さんが宏池会の伝統に従って財政規律を強く打ち出せば、賛成する国民も少なくないはずです。もちろん反対意見も出るでしょうが、何より『これからの日本をどうするか』という健全な議論が巻き起こることが期待できます。ところが岸田さんが実際にやっていることは、何のポリシーもなく各派閥が訴えた政策を取り入れるだけ。結果として予算は膨れあがりますが、庶民の苦しい暮らし向きは何も変わらない。ネット上で『重税』という強い批判がわき起こるのは当然だと言えます」