エッセイスト 小島慶子
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 動画やテレビで、AIによる自動音声を耳にすることが増えました。まだどことなく不自然でAIによるものだとわかりますが、今後はより滑らかで自然になっていくはずです。最終的には従来のようなアナウンサーという仕事は消滅するでしょう。

 単に「用意したものを読み上げる・決められたことを言う」作業はAI音声で行い、災害報道などの緊急性と不確実性の高い状況下での情報伝達や、生活情報番組やバラエティー番組などの親近感と共感を重視する場面では人間のプロが出演する、という棲み分けになっていくのではないかと思います。また、これまでのような「記者は取材のプロなので棒読みでもOK、上手に読み上げるのはアナウンサーの仕事」という棲み分けもなくなるでしょう。記者もアナウンサーと同様の音声・身体表現の訓練が必須化されるはずです。今はメディアで働く人だけではなく、企業や個人が発信するのは当たり前です。かつてアナウンサーだけが特別に訓練を受けていた「人前でわかりやすく伝える技術」は、もはや万人に必須の基礎的な教養となりつつあります。

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