エディー・ジョーンズ元ラグビー日本代表監督。2019年大会ではイングランド代表を準優勝に導き、23年からは出身国オーストラリアの代表監督を務める(写真/Miho Watanabe、協力/オーストラリア大使館)

 5敗のうち2試合は前半に退場者を出し、数的不利になったことが影響した。身体の高い位置へのタックルのルールが厳格化されており、W杯前にその判定基準を確認できた意味では、退場も無駄でなかった。ジョセフHCは「高いレベルの強度やスピードのなかで、自分たちを試すことができた。負けた試合もいい経験になった」と、内容には一定の評価を与えている。

松島幸太朗が担う役割

 日本ラグビーの特徴は、テンポ良くボールを動かすことにある。速いパス回しでオープンスペースを突き、相手に守備の的を絞らせないのだ。ピッチを幅広く使うラグビーとも言える。

 得点源となるバックス(BK)には、ともにフィジー出身のジョネ・ナイカブラとセミシ・マシレワ、前回大会5トライの松島ら、決定力の高いフィニッシャーが揃う。彼らへボールを供給し、トライを奪っていくのだ。

 とりわけ重要な役割を担うのは松島だろう。この30歳は20年秋から22年夏まで、フランスのクレルモンでプレーした。開催国の空気を知る彼の存在は、チームの大きな支えになる。松島自身、「フランスでレベルの高い試合を経験できた。あちらでお世話になった人たちをワクワクさせる試合をしたい」と、闘志を燃やしている。

 15年W杯で日本を指揮したエディー・ジョーンズも、松島を高く評価する。

「彼はバックスの選手として日本で一番になり、海外で経験を積み、高いスキルを身につけた。現在は若い選手を指導する立場になっている」

(スポーツライター・戸塚啓)

AERA 2023年9月18日号より抜粋

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