白井:それから、中国が繰り返し強調することですが、国際法的に見た場合、台湾問題は中国の国内問題なんですよね。アメリカも日本も、「一つの中国」を認め、その政府は北京の政府であると認めた条約を中国と結んでいます。ですから、国際法と条約の建てつけからすれば、台湾問題はどう見ても国際問題ではなく、中国の国内問題だということになる。仮に台湾有事の可能性が高まれば、中国はこの論点をいまよりも一層強く打ち出して、国際社会に訴えるでしょう。そして、論理的にはこの主張に反駁するのは難しい……ここに台湾問題とウクライナ紛争との大きな違いがあります。

 とにもかくにも、台湾有事が発生などしてしまったら、大変な悲劇になります。今の日本がなすべきことは、その発生をあらゆる手段を尽くして防ぐことです。実際、台湾の有識者のあいだでも、その発生の可能性が相当の危機感をもって語られている。とはいえ、武力統一は中国共産党にとっても、あまりにリスクが高すぎる選択肢であるはずなのです。習近平も安易にそれを選べるはずがない。

 問題は、では中国の指導部が本音のところでどうしようと考えているのか、探ろうとすらしなくなっていることです。この間、信頼関係のあるパイプが失われた、あるいは無効化してしまった。深く入り込もうとしただけで、「親中派」「中共のスパイ」などとレッテルを貼りつける愚劣な右翼ポピュリズムが跋扈しているからです。

 したがって結局は、この問題でも、日本は独自の判断ができずにアメリカに引きずられるがままとなるでしょう。

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