白井:習近平の前にロシアに行った外交トップの王毅政治局委員がかなり話を詰めていたはずです。ゼレンスキーとの電話会談の直前にも習近平の腹心の李尚福国防相がロシアに行っています。プーチンとしては習近平に何とかしてもらうしかないという心境なのでしょうね。モスクワでの習近平の歓待ぶりはすごいものでした。
問題はどんな条件提示があったのか。どこまでだったら妥協できるのかなど、相当具体的に協議されたはずです。もちろん、ゼレンスキーとの電話会談前にもウクライナと中国の間で、停戦の条件などがずっと協議されていたはずです。もし習近平がキーウに行くとすれば、9割方は話が決まっていて、あとはだるまの目を入れに行くだけと見ていいでしょうね。
内田:アメリカの没落は、見方を変えれば、属国日本にとっては、国家主権を回復して、主権国家になる絶好の機会でもあります。日本がアメリカの単なる属国でいるよりも、アメリカとは違う世界戦略に基づいて、独自に世界秩序を構想する独立国である方が、アメリカにとって利益が大きいというふうに今こそ説得すべきだと思います。
白井:アメリカの没落で東アジアはどうなるのか。シナリオはいろいろ考えられますが、大まかに言えば「中国の時代」ということでしょう。アメリカがそれを渋々であれ認めるのであれば、たとえば台湾問題はある意味で自然消滅していく方向になって戦争の可能性も低くなります。あるいは逆に、アメリカが半ばデスペレート(やけくそ)になって、「こうなったら東アジアで巻き返すしかないんだ」と米中戦争に突っ込んでいく。そのどちらかではないでしょうか。