要するに、2015年のミンスク2が破られるような内部的な要因がロシアにもウクライナにもあったにしろ、ドンバス紛争を鎮める大親分としてドイツは力不足だったというわけです。しかも今になってメルケル元首相は、ミンスク2はウクライナ軍の強化のための時間稼ぎをするためのものであって、ハナからしっかり守らせるつもりはなかった、などと言い出しています。
一方でアメリカは何をしていたのか。ミンスク合意というかたちでドイツのヨーロッパにおける外交的存在感が増すことを全く快く思っていませんでした。だから、ノルドストリーム2はやめろと圧力をかけ続けていたし、その破壊もアメリカの仕業とさえ言われているわけです。
結局、ドイツ親分もアメリカ親分も駄目となっている今、中国親分が「俺に任せろ」と出てきつつある。さて、どうなるか。これが最も注目すべき国際情勢でしょう。
内田樹(以下、内田):中国が「時の氏神」になれたら、これは中国の歴史的な外交的成功であり、世界の基軸がアメリカから大きく中国にシフトしたというふうに国際社会は解釈するでしょう。ただ、ウクライナとロシアが中国の調停案を蹴ったら、ドイツ、アメリカと同じように面目丸つぶれになる。