エッセイスト 小島慶子
この記事の写真をすべて見る

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【この記事の写真をもっと見る】

*  *  *

 人生には何が起きるかわかりません。事故や病気に襲われることも。万が一の時は、と伴侶と話している人も多いでしょう。

「そろそろ養子縁組をしようかとも考えている」。そう語っていた知人は不慮の事故に遭い、彼の長年の伴侶は、生死の境を彷徨(さまよ)う愛する人のそばに駆けつけることができませんでした。二人は同性カップルだったからです。知人の親族が病院に掛け合って、伴侶はようやく病室に付き添うことができたそうです。知人は伴侶の呼びかけに反応し、やがて意識を取り戻して、少しずつ回復に向かっています。

 先日、ある裁判の報道がありました。伴侶を事故で亡くした女性が、事故の裁判に遺族として出廷することができなかったのです。同性カップルであることが壁となりました。自治体のパートナーシップ制度に登録していましたが、実質的な助けにはなりませんでした。女性は「養子縁組をしておけば」と悔やみつつ、亡き伴侶が望んでいたのは、同性婚で二人が公的に認められることだったと涙ながらに語りました。また、伴侶を犯罪被害で失い心身に打撃を受けて困窮した人が犯罪被害者等給付金を求めて起こした訴えが「異性の事実婚と同性の事実婚を同等に扱う社会通念が醸成されていない」と棄却された事例もあります。

次のページ