「インボイスOK」をうたう個人タクシー(撮影/首藤由之)

 フリーランスや小規模事業者が影響を受けるインボイス制度の開始が迫っている。対応するか否か、業界模様はさまざまだ。AERA 2023年9月4日号より。

【図表】消費税納税の仕組みとインボイス制度はこちら

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 YouTuber「税理士ナガイ」としても知られる永井圭介氏(43)は8月初め、飲み屋に行って驚いた。

「そこで働く女性たちがインボイスを話題にしていたんです。それも高い店と安い店をハシゴしたら、両方で同じ話題が出ました。自分にも関係していて大変、みたいな感じでしたね」

 きっと女性たちは「免税事業者」なのだろう。だから後述するように、確かにインボイスで焦点になる人たちではある。とはいえ難しい専門用語である。

「客が話題にすることが多いのでしょう。けっこう盛り上がっているのかも、と思いましたよ」

 10月1日から始まるインボイス制度(適格請求書等保存方式)。簡単に言えば、消費税の納税方法が変わるのだ。

 モノを買ったりするとお店に消費税を支払うが、それを国に納めるのは受け取った事業者(年間課税売上高が1千万円超の課税事業者)だ。ただし、受け取った全額を納める必要はない。仕入れで支払った分は差し引ける(仕入税額控除)。これまでは証明書は不要だったが、10月からは仕入れ先が出す証明書がないと差し引けなくなる。

 それこそ「インボイス」(適格請求書)だ。「インボイス」を発行するには、国に届けを出して登録番号をもらう必要がある。課税事業者は届け出て、これまでと同様に納税すればいいが、もう一つ、実はこれまで消費税を受け取りながら納税を免れてきた事業者たちがいる。年間課税売上高1千万円以下の「免税事業者」たちである。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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