首都直下地震による都内の帰宅困難者は約453万人。東日本大震災を上回るとされる(撮影/写真映像部・高野楓菜)

 関東大地震から丸1世紀。今また首都圏を襲うとされるのが「首都直下地震」だ。100年前と比べ、交通機関が発達した東京に大地震が発生すれば、多くの人が行き場をなくす。受け入れ先をどう確保するのか。AERA 2023年8月28日号より。

【図】首都直下地震 東京23区の被害想定がこちら

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 関東大震災では文明生活のもろさが指摘されたが、現代はその比ではない。100年前と比べて一極集中が飛躍的に進んだ首都が被災すれば、どうなるか。まず、深刻なのが帰宅困難者だ。記憶に新しい2011年3月11日の東日本大震災では交通機関がマヒし、東京だけで約352万人が「帰宅困難」となった。

 都防災会議地震部会が昨年見直した想定では、首都直下地震で都内の鉄道各社は軒並み運行を停止し新幹線も止まる。都内だけで帰宅困難者は最大453万人と、東日本大震災の約1.3倍となる。

 453万人のうち多くが勤務先や学校にとどまるとされるが、買い物客や観光客など約66万人が行き場をなくす。都は、駅周辺のビルや商業施設に帰宅困難者を受け入れる「一時滞在施設」の指定を進めてきたが、今年1月1日時点で確保できたのは約44万人分(1217カ所)で、約22万人の受け入れ先がない。

 都総合防災部の担当者は言う。

「大型施設など、大規模再開発の際に事業者に一時滞在施設を設けるよう協力を要請したりして、着実に増やしていきたいと思っています」

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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